なんてことはない綺麗な記憶のこと

夢を見た。

人を轢き殺してしまう夢で、また変な時間に目覚めた。

 

そんな最低で最高な朝を迎えたとき、ほんの少し恍惚とした感情に覆われた。ぼくは苦しい時とか、辛い・悲しい時、たいていそばに誰かいて、孤独というものをあまり感じたことがない。当時の自分を振り返れば、確かに孤独だとかなんだとか叫んでいた気もするけど、今思うと大したことはなかった。

例えばそう、最初に東京に越してきたときは確かにしんどかった。金も、仕事も、人脈もなかったから、ネットに縋った。その当時、付き合ってくれていた彼女がいて、家に転がり込んだりとか、家に転がり込まれたりとかいろいろあった。

彼女らとの出来事の多くは、あまり覚えていない。何をやったとか、どこにいたとか、どんなことを話したかなんてのもわからない。けれど、ただ楽しくて、幸せだったような気がする。そういう綺麗な記憶、情景だけが心身に残っている。

 

結果的に、ぼくは嫌われてしまったり、失望されたりしてしまったのだろうけれど、そういう部分をひっくるめても、ぼくはその記憶の中の風景が好きで、今でもふと蘇ったりする。楽観的だから、ぼくがが加害とか被害の意識がないだけかもしれない。

家で寝ていて、ふと起こされたり、起きたり。外に出る理由は特にないけれど、着替えて二人で出かけたりした。そういった、何でもない時間の記憶がぼくにとっては貴重なものだった。またそういった体験ができないかなと、今また思う。

 

色褪せない、綺麗な記憶のこと