大げさな言葉のない悲歌

ときどき 自分が すっかりりいやになり

腹が立って 自分に背中を向けたくなることがある

それが 道理にかなったことかどうか だれに判断できよう

しかし 自分を知る者は きっと わたしを理解してくれるだろう

電車が一台とおり過ぎたとき

ひどく びっくりすることがある

なぜ あっさり あの下に寝ころばなかったのかろ

そして そんな場合が 百ぺん以上ある

ひとは しょっちゅう おなじ手を洗わなきゃならないなんて

そして 節操のある者は すでに 限られている

このうえ 何によって 自分をびっくりさせたらいいのだ

自分のことを考えるだけで あくびをせずにいられない

つくづく 自分に あいそがつきる

こんな気持ちは 言葉では 全然あらわせない

じっと 自分をながめる――そして そのながめに耐えられない

そして 自分自身が すっかりいやになる

ひとは どんなに いろんなものになりたいだろう

一枚の画 一冊の本 森の中の一里塚か

一株のアネモネ でなければ ほかの何かに

とんでもない そんなことになってはたいへん

しかし そんな日も また めぐり去る

そして ひとは また いばりつづける

医者はうなずいて言う それは神経だと

さよう ひとは 頭がよぎると また ばかになる