【中編】不動産業に転職・就職したい人、あるいは不動産購入を考えてる人に向けた雑記

 

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 ということで、前回は不動産業という市場について少しお話しました。今回は、不動産のお金にまつわる部分についてぼくの知り得る範囲で書いていこうと思います。不動産の今後の価値取引方法についてなんかは、これから不動産購入を考える方にとっては少し役立つものかと思います。

不動産仲介業における収入

賃貸に関しては全く無知なのと、新築マンション販売も別の世界なのでここに興味のある方は個別にお調べください。

ここでは不動産仲介(新築戸建・中古戸建・中古マンション・土地)に関わる部分でお話します。まず結論、不動産業の中で恐らく一番個人の収入が高い傾向にあるのは投資用不動産販売です。ちょっとぼくも詳しくないのですが、例えば山手線沿線にあるワンルームマンションなどをアッパー層以上の方々に販売するものです。

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 その販売するマンションが自社不動産なのか仲介なのかという部分でぼくは理解が無いのですが、どちらにせよ販売価格は1億~数百億までのふり幅があります。簡単に、50億程度のマンションを2件販売すると粗利がおよそ税抜3000万となります。その2件が年間の販売数だったとして、細かいP/Lは抜きに業務委託形式の算出だと仮定すると、人件費が月間35万(年間420万)、広告宣伝費が月間150万(年間1800万)で合計2220万円となりおよそ780万円が概算としておよその営業利益になります。
営業外利益や特別損益は今回計上しないものとして、その780万が純利益なわけですね。それをすべて営業個人に還元すると会社がなくなってしまうので、およそ20%~50%くらいの幅でインセンティブという還元になると思います。そうすると、よければ年間390万近くがインセンティブとなり、固定給が額面420万となれば810万円が収入となるような気がします。つまり年間2件さえ売れば、額面でいうとそこそこ貰える感じですね。ただ50億規模となれば即決ともいかず、かつアッパー層以上へのアプローチなのでかなり大変だと思います。コンスタントに黒字を出し続けているような企業の役員にアポを取るということなので、まあ取り次いでもらえないですね。
これに関しては不動産だけではなく、証券の営業さんなどもいつも苦労しているところだと思います。受付突破とか、電話とかDMとか、資料問合せとかいろんな方法はありますがかなり地道な作業です。あと、アッパー層に関してはネットの口コミではなく自分の信頼する相手からの評判で動くという傾向が非常に高いのでそういう部分も苦労があると思ってます。ただ、自分の投資するものを自分で全て調べるかというとぼくの知り得る範囲ではそういうわけではないです。暇じゃないので、信頼が一定以上上回れば意外とベットしてくれる印象はあります。
ちなみに自社不動産か仲介かという部分を書いたのは、それぞれの利益率が違うからですね。これに関しては次項で説明します。

そして不動産仲介の場合ですが、粗利が3000万ほどになれば最終的な収入着地は投資用不動産の場合と同様で年収810万くらいになると思います。といっても販管費、特に広告宣伝費の割合が会社によってかなり差があるので同条件での目安と考えてください。

ではどの程度販売すればそのくらいになるかというと、物件販売価格の合計がおよそ9億1000万くらいになれば粗利の着地は3000万くらいになります。なんでその額なんだという話なんですが、不動産売買の仲介は国交省によって報酬額が規定されてるんですね。詳細は下記URLの「報酬告示」になるんですが、つまり400万円以上の不動産売買は物件価格×3.3%が報酬上限なわけです。
つまり、いわゆる仲介手数料は3000万/0.033=約9億900万≒約9億1000万という感じ。また別項で説明しますが、この3.3%というのは片手仲介の場合のみなので両手仲介の場合はもう少し目標売上は下がるかと思います。

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自社物件か仲介かと言ったのは、自社物件の場合例えば3000万で仕入れて5000万で売れば2000万の粗利なので算出が別なんですね。新築戸建の販売を専門としてるような不動産屋(I田グループとか)はまた別ということです。あくまで仲介業ではこういう仕組みなので、給与計算はこれをベースにしながら会社の販管費や会社への内部留保率を見ていくと大体わかってきます。

ちなみにインセンティブってのはたいてい四半期、半期などのボーナス反映が多いような印象ですがこれは不動産屋によって違います。半期などの反映の場合だと、月間の販売件数によって個別の賞金(販売件数×2万とかそういう)があったり、宅建免許持ってたら月収が+3万とかだったりします。それは不動産業の求人広告に掲載あったりすると思うので、個別に調べてみるといいと思います。
結論、不動産売買の仲介業は(当たり前なのですが)結果次第で短期間の中で自分の収入を上げることも出来るし学歴やスキルを予め持っていなくてもそこからの勉強やスキルを磨くことでどうとでもなる世界であると思います。

 

片手仲介と両手仲介

さきほど片手仲介両手仲介という言葉を使いました。片手仲介というのは購入するお客さんからのみ仲介手数料を貰う取引、両手仲介というのは売るお客さんと買うお客さんの両方から手数料を貰う取引のことです。この記事が非常にわかりやすいです。

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そもそもなのですが、不動産の売買というのが不動産業者の独占的な市場なので売りたい人も買いたい人も不動産業者に行くわけですね。上の記事にもありますが、家でもなんでも売るときは少しでも高く売れる方が当然嬉しいのですが、家を買うときは少しでも安い方が嬉しいわけです。このお互いの利益が異なる状態のなか、1社の不動産業者のみでその物件を仲介するのは利益相反と呼ばれます。とはいっても、他に方法があるわけではないのですが問題視されがちというものです。

この利益相反は両手仲介でのみ起こりえます。その家を売りたい人と買いたい人を1社で抱え込んだ場合ですね。一方で、片手仲介というのは売りたい人の不動産を買いたい人を自社で探せない場合にREINSに掲載するなどで他の不動産屋に来るお客さんが買うケースがあります、もちろん逆のパターンもあります。この場合は、売る人か買う人のどちらかのために価格を高めに設定したり、逆に値引き交渉(指値)をしたりとそれぞれの立場で契約を進めることが出来ます。

両手仲介になる場合というのは、他社の新築戸建の場合再販物件(リフォームして販売されている物件)の場合売主と買主を自社で抱え込んだ場合の3つです。新築戸建てや再販物件の場合は、その家を売りたい(持ち主の)不動産業者からも仲介手数料を貰えるわけですね。その場合は、例えば6000万の新築物件を成約すれば粗利約400万ですね。新築の場合は建物(上物)が課税対象なのでちょっと計算方法が異なりますが、だいたい400万です。

つまり、仲介業のみやっている不動産屋は1件当たりの利益を増やすために両手仲介が可能な物件に誘導する可能性があります。これはぶっちゃけあり得ます、ぼくのいた不動産屋はそれにこだわる必要がなかったので片手であれ両手であれウェルカムでしたが、仲介しかやってない業者なんかだと違うこともあるみたいです。もしお客さんとして行くことがあれば、執拗に自社物件や新築、再販を勧めてきたら危ないと考えてもいいと思います。

【後半へ】

最後は不動産の価格の推移や、最近流行りの中古リノベーションについて話します